債務整理(借金問題)
このような方は債務整理をご検討ください
1 債務整理の認知度
法律専門職に関係のない一般の方は、破産という言葉は知っていても、債務整理全般についてあらかじめある程度の知識があるということはほとんどありません。
借金を抱え、その返済が厳しくなって初めてネット等で情報を収集し、任意整理や個人再生といった手段があるということを知るという方がほとんどでしょう。
しかし、債務整理を検討する時期を誤ると、例えば、できれば避けたかったという思いがあったとしても自己破産しか選択肢がないなど、取り返しのつかないことにもなりかねません。
そこで、本稿では、債務整理を検討したほうがいい状況についてご説明します。
2 借り入れ等の返済が厳しくなった場合
例えば、銀行カードローンを申し込み、50万円の枠で借り入れと返済を繰り返していたが、枠が300万円に増えたため借入額を300万円近くまで増やしたところ、勤務先で夜勤のない部署に異動となったため収入が減り、返済が厳しくなったとします。
この場合に取りうる手段として、①収入のよい会社に転職する、または副業を行うことで返済原資を増やす、②他社から借り入れて返済に充てる、③債務整理を行う、以上3つの手段があり得ます(なお、借入れをした銀行に相談して月々の返済額を減らせないかどうか確認することも可能です)。
このうち、①については、それが手段として現実的であれば選択肢として検討してよいと思いますが、そのようなケースは少ないでしょう。
となりますと、②か③ということになりますが、②は他社の借入金を返済に充てるのですから、いわゆる自転車操業に入ることになり、いずれは追加の借り入れができなくなりますので、収入が増えない限り、破綻することになります。
自転車操業になった場合、負債額は膨張しますので、任意整理や個人再生は困難で自己破産しか選択肢がない、ということが起こりやすくなります。
となりますと、1社でも借り入れがあり、その返済が厳しくなった方は、一度債務整理を検討して弁護士に相談してみるとよいでしょう。
3 住宅ローンがある場合
住宅ローンを負担している方が、車のローンや銀行カードローンについても負債がある場合、住宅資金特別条項を利用した個人再生を行うことで、住宅ローンの返済を継続しつつ、その他の負債を整理することができます。
住宅ローンの返済は継続しますので、自宅は維持することができます。
しかし、住宅ローンを延滞してしまうと、個人再生は困難になることが多くなります。
自転車操業になってしまうと、住宅ローンも延滞してしまうことになりかねません。
そこで、返済のために借入れが必要な状況になった方は、債務整理を検討したほうがよいでしょう。
なお、負債は住宅ローンのみで、その住宅ローンの返済が厳しくなったという場合は、住宅ローン会社にリスケジュールの相談を行っていただくことになります。
そして、リスケジュールができず、住宅ローンを延滞することになった方は、放置せず債務整理(自己破産)を検討したほうがよいでしょう。
債務整理について弁護士に依頼した場合と司法書士に依頼した場合の違い
1 司法書士が行える債務整理は一部のみ
債務整理手続は元々弁護士のみが行える手続でしたが、例外的に一部の業務を司法書士も行うことが認められています。
具体的には、140万円以下の借金について、任意整理を行うことが可能です。
しかし、弁護士と同様に債務整理を行えるのはこの手続きだけであり、140万円を超える借金の任意整理は行えません。
個人再生や自己破産の手続については、書類の作成を補助することはできるものの、代理人として活動することはできません。
2 任意整理を司法書士に依頼した場合
先述の通り、司法書士に任意整理を依頼した場合でも、140万円以下の借金であれば弁護士と同等の活動を行うことができます。
しかし、依頼する時点で借金の額を正確に把握していないこともしばしばあります。
そうすると、一度司法書士に依頼したものの、借金額が140万円を超えていることが後からわかり、弁護士に依頼しなおすということがあり得ます。
ですので、特に借金額が正確にわかっていない場合は最初から弁護士に依頼した方が二度手間にならずに済むといえます。
3 個人再生や自己破産を司法書士に依頼した場合
個人再生や自己破産を弁護士に依頼した場合、弁護士は代理人として活動します。
そのため、申立からその後の対応についても、本人の代わりとなって弁護士が対応することができます。
他方、司法書士に依頼した場合は書類作成のみしか行うことができません。
そのため、申立やその後の対応は基本的に申し立てた本人自身が行うことになります。
両手続とも、一定額を裁判所に納付しなければならないのですが、弁護士が申し立てた場合と比べて、司法書士に依頼した場合、つまり本人自身が申し立てた場合は納付金額が高くなるのが通常です。
ですので、仮に司法書士費用が弁護士費用よりも安かったとしても、手続き自体にかかる費用を考えるとむしろ司法書士に依頼した場合の方が高くつくということが多いかと思います。