逮捕されるとどうなるのか
1 逮捕されると
⑴ 逮捕されることで生じるリスク
逮捕されてしまうと、逮捕段階だけで3日間、さらに勾留されると最大20日間、社会から隔離されるため、日常生活にも大きな支障をきたします。
場合によっては、退学処分となったり、会社を解雇されたりする可能性があります。
⑵ 逮捕の種類
逮捕には現行犯逮捕と令状逮捕、緊急逮捕があります。
現行犯逮捕は、犯行を警察官ないし私人が現認して身体拘束を行うものです。
令状逮捕は、逮捕令状を裁判所に請求し、裁判所が逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがあると判断した場合に発布され、警察が被疑者の自宅などを訪問してその場であるいは警察署に連行して逮捕令状を発布して逮捕するものです。
緊急逮捕は刑事訴訟法210条前段で規定している逮捕で、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる充分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状を求めることができないときは、その理由を告げて被疑者を逮捕することができる。」というものですが、あまり多くはありません。
2 逮捕されてから起訴・公判までの流れ
⑴ 検察庁に送致されるまで(48時間以内)
警察によって逮捕されると、逮捕から48時間以内に証拠やその関係書類と共に、身柄が検察庁へ送致されます。
これを身柄送検といいます。
⑵ 検察庁に送致後、検察官から勾留請求されるまで(24時間以内)
検察庁に身柄送検されたあと、検察官は被疑者を取り調べて「被疑者を勾留するかどうか」を判断します。
そして、検察官が「勾留する必要あり」と判断したら、裁判所へ勾留請求を行います。
そこで、勾留する必要があると裁判官が判断すると、勾留決定されることになります。
なお、以下の場合、通常検察官は勾留請求します。
- ・証拠隠滅や逃亡のおそれがある場合
- ・重大犯罪の場合
- ・容疑を否認している場合
- ・令状逮捕の場合
検察官から勾留請求されると裁判官は勾留決定することが大半ですが、軽微な事案で容疑を認めている場合は、裁判官が勾留決定せずに釈放することも少なからずあります。
検察官の勾留請求や裁判官の勾留決定を回避し、釈放されるようにするためには、刑事事件に強い弁護士に刑事弁護を依頼することをおすすめします。
⑶ 勾留されてから起訴されるまで(最大20日)
被疑者が勾留されている間、検察官、警察官による取調べを受けることになります。
勾留期間は10日間ですが、10日間では取調べ捜査の時間が足りない場合には、勾留期間延長を検察官が裁判所に請求してさらに10日間、つまり最大で20日間勾留されることとなります。
そのような勾留期間の満期までに、起訴するのに十分証拠が揃ったと検察官が判断した場合には、起訴(裁判手続に進むこと)されます。
もっとも、事件、犯罪が軽微で罰金刑が法定刑にある場合には正式裁判ではなく、正式裁判が開かれない略式命令手続きで罰金刑となることもあります。
参考リンク:検察庁・略式裁判について
⑷ 起訴されてから公判に至るまで
起訴されてから実際の裁判(公判)が開始されるまで、通常、2か月前後かかります。
その間も勾留は継続しますが、起訴されると保釈制度が適用され、要件を満たしていれば、保釈金納付及び保釈条件順守を条件に、裁判官により保釈決定がなされ、釈放されることもあります。
3 接見(面会)における一般の方の制限
逮捕・勾留されると、当然、警察の留置施設などに拘束されます。
ご家族や友人、恋人であれば、「すぐに駆けつけて、大切な人を励ましてあげたい」「必要なものを差し入れてあげたい」という気持ちになるかと思います。
しかし、被疑者・被告人と一般の方との接見(面会)、および差入れについて、裁判所による制限が付されることがあります。
⑴ 逮捕段階
逮捕段階ですと、通常、被疑者の家族は被疑者と面会することはできません。
まれに担当刑事の配慮で被疑者と面会できることがありますが、制度としてはありません。
逮捕段階で被疑者と面会(接見)できるのは、弁護士のみとなります。
したがって、被疑者がどういう嫌疑で逮捕されたのか、警察の留置場でどういう状況に置かれているのかを家族が知りたい場合には弁護士に依頼することになります。
もっとも、どの弁護士でもよいわけではありません。
逮捕段階の接見では、弁護士は被疑者から被疑事実を聞いて、今後の手続きの流れ、取調べにどう対応するか、気を付けるべき点の助言などの弁護方針を決める必要がありますので、刑事事件に強い弁護士に刑事弁護を依頼することをおすすめします。
⑵ 勾留段階
逮捕後48時間以内に検察庁に身柄送検され、検察官の取調べ、裁判官の勾留質問を経て10日間(勾留延長されると最大20日間)勾留されることになります。
ア 接見禁止
裁判所が勾留決定するときに、一般の方との面会を自由に許すと証拠隠滅などのおそれが増すと裁判所が判断した場合(具体的には共犯事件が大半です)、接見禁止処分がなされます。
もっとも、接見禁止処分が付されることはあまり多くはありません。
「接見禁止」とはご家族含め、一般の方との面会や手紙のやり取りが禁止されることです。
したがって、接見禁止の場合、たとえご家族であっても拘束されている被疑者・被告人とは一切連絡が取れなくなります。
しかし、弁護士であれば接見に関する制限がないため、事件や取調べに関するアドバイスはもちろん、拘束されている被疑者・被告人の方へ、ご家族の思いを伝えることができます。
イ 接見(面会)における様々な制限
接見(面会)において、一般の方と弁護士とでは、様々な制限の違いがあります。
- 【一般面会】
- ・接見禁止:制限あり。接見禁止の場合、面会不可。
- ・接見可能なタイミング:制限あり。逮捕~勾留決定まで面会不可。
- ・曜日制限:制限あり。月~金曜日の平日限定。
- ・時間制限:制限あり。朝9時~夕方5時のみ。1回につき15~20分程度。
- ・人数と回数の制限:制限あり。1日1組3人まで。1日1回のみ。
- ・立会いの制限:制限あり。必ず警察官が立ち会い、会話内容を記録される。
- 【弁護士面会】
- ・接見禁止:制限なし。接見禁止のときでも面会OK。
- ・接見可能なタイミング:制限なし。逮捕後すぐ面会OK。
- ・曜日制限:制限なし。土日祝日でも面会OK。
- ・時間制限:制限なし。早朝、夜間でも面会OK。
- ・人数と回数の制限:制限なし。1日に何人でも面会OK。1日複数回面会できる。
- ・立会いの制限:制限なし。被疑者・被告人と2人きりでの面会が可能。
- 【一般面会と弁護士面会の比較】
- ・逮捕後から勾留決定までの間、一般の方が拘束されている被疑者・被告人と会うことはできません。
- ・弁護士の場合、どのようなときであっても、接見可能であるのに対して、一般の方は平日のみ・朝9~夕方5時までの時間制限があります。
- ・一般の方が接見(面会)する場合、警察官が必ず立ち会い、その会話内容が全て記録されます。
- ・人数制限において、一般の方には、1日につき1組3人までと制限されています。
- したがって、同じ日に、先に別の一般の方(友人や会社同僚など)が接見(面会)済みであれば、たとえご家族であっても、同日に拘束されている被疑者・被告人と会うことができません。
ウ 差入れについての制限
- 【差入れできる主なもの】
- ・下着や衣類(ヒモは取り外しておく)
- ・本や雑誌
- ・現金
- ・手紙や写真
- ・メガネやコンタクト
- 【差入れできない主なもの】
- ・化粧品
- ・たばこ
- ・食べ物や飲み物
- ・スポーツタオルやハンカチ(サイズによります)
留置施設によって多少の違いがありますので、面会時間や差入れできるものなどは、弁護士にご相談いただくか、直接、留置施設に問い合わせることをおすすめします。
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